「触覚連画-Tactile Renga-」
   触覚連画は、全盲の造形作家'(visually impaired artist)光島貴之と、中村理恵子+安斎利洋の三人による、連画セッションです。光島は近年、粘着テープ(レトラライン)や粘着シート(カッティングシート)を用いた独特の手法による触覚絵画を追求しており、一方中村と安斎は、1992年からデジタルデータとしての絵(コンピュータ・グラフィックス)をネットワークを通して送りあい、相手の絵に手を加えることによって、新しい自分自身の作品を作り出していくコラボレーションアート「連画」の実験を続けてきました。触覚連画は、そのふたつの創作実験が出会ったところに生まれたと言うことができます。触覚連画は、1998年のはじめに光島によるふたつの作品を種として出発します。光島作品は、スキャナによってデジタイズされ、安斎と中村それぞれによって連画作品として作り変えられます。デジタルデータとして生まれ変わった新しい作品は、次に触覚で理解できる出力形態をとり光島に送られ、光島の手の中で変容します。このような経過をたどり、見るとは何か、触るとは何かといった問いかけを畳み込まれた「形の対話」が成長していきました。触覚連画は、中村VS光島、安斎VS光島の、二つの話線でスタートしましたが、途中意図的な混信によって交配されていく様を見ることができます。■「触覚連画の方法」安斎と中村による画面の中のCG画像を、触覚世界の光島に伝達するために、ふたつの手法が用いられました。ひとつは、プリント画像を熱処理で凹凸加工する方法。もうひとつは、カッティングシートをカッティングプロッターで切りぬく方法です。カッティングシートは、剥離紙がついたままの状態で光島に手渡されるので、剥がして再構成したり、新しい要素を加えることができます。

●作家プロフィール
photo by Atsuko TAKAGI


光島貴之 Takayuki MITSUSHIMA1954年/京都生まれ。幼時期の視力は0.02程度。10才頃失明。1976年/盲学校理療科卒後、大谷大学で実存主義を学ぶ。1982年/鍼灸院開業。1992年より、ミューズカンパニー主催の「視覚を越える造形ワークショップ」に参加。西村陽平氏に師事。1995年8月/フラービオ・ティトロ(全盲の石彫作家)のドローイングに触れ「触る絵画」のヒントを得る。1997年11月/「アジアの風」(池袋芸術劇場)1998年3月 / '98長野アートパラリンピック大賞・銀賞。1998年4月 /「光島貴之展」(ギャラリーはねうさぎ)1998年11月/「アート・ナウ'98」(兵庫県立近代美術館)1999年2月/「エイブル・アート'99」(東京都美術館)出品1999年5月/第9回京都芸術際「SKIN−DIVE INTO」出展1999年6月 /「光島貴之の世界」展(銀座ギャラリーK)



安斎利洋 Toshihiro ANZAI東京生まれ。コンピュータアーティスト。ソフトウェアエンジニア。1987年/(株)サピエンス(Sapience Corp)にて、CGペイントシステム「スーパー・タブロー(SuperTableau)」を開発。1991年〜1997年 「日経コミュニケーション」表紙を制作。1992年/中村理恵子と「連画」を始める。1993年/「Ramblers」(ネットワークモデルによる数理的な作品)。1994年/IMAGINA'94(仏)招待講演、SIGGRAPH'94(米)TheEdge、Art &DesignShow両部門入選。1995年/第一回情報文化学会賞大賞受賞( 情報文化学会/JICS; Japan Information-Culture Society)。マルチメディアグランプリ'95ネットワーク部門アート賞受賞(Network Section Art Award  Multimedia Grand  Prix '95/MMCA)。1996年/北京にて「北京連画」ライブ公開。森脇裕之、木原民雄、藤井孝一、牧野純子らとNTT/ICCにて「Moppet連画ワークショップ」。1997年/木原民雄、藤井孝一らと「Moppet」制作。「PrixArsElectronica97」のInteractive Art部門入選。1998年/朝日新聞元旦別刷り-特集「21世紀を詠む」-CG連画制作。インターネット連画システム「TheWALL」の開発を指揮。木原民雄らとプラネタリウムをキャンバスにしたペイントシステム「「天球作図機 マジック・ケプラー(MAGIC KEPLER)」を開発。1999年 NHK「ハート展」出品著書:「パーソナル・コンピュータ・グラフィックス」(1986/美術出版社)"PersonalComputer Graphics" (Bijutsu-Shuppan Publishing)「ターボ・グラフィックス」(1987/JICC出版局)"Turbo Graphics" (co-author, JICC Publishing)など。


中村理恵子 Rieko NAKAMURA北海道十勝国生まれ。アーティスト。武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。1991年/「AVA/NICOGRAPH CGグランプリ」「NICOGRAPH第10回記念CG優秀賞」受賞。デジタル・イメージ創立メンバー。1992年/安斎利洋とネットワークを使ったCGの連作「連画」を始める。1992、1993年/IMAGINA入選。1994年/IMAGINA'94(仏)招待講演、SIGGRAPH'94(米)TheEdge、Art &DesignShow両部門入選。1995年/第一回情報文化学会賞大賞受賞( 情報文化学会/JICS; Japan Information-Culture Society)。マルチメディアグランプリ'95ネットワーク部門アート賞受賞(Network Section Art Award  Multimedia Grand  Prix '95/MMCA)。1996年/「'96元旦連画」(共同通信社)で安斎、中村に、歌人の俵万智をまじえたセッション。北京にて「北京連画」ライブ公開。ネットワークアートシアター[連芸座]のプロデュース。1996年〜1998年「ポートレイトinサイバースペース」(インターネットアスキー)コラム連載。1997年/安斎利洋、木原民雄、藤井孝一らと「Moppet」制作。「PrixArsElectronica97」(オーストリア)のInteractive Art部門Honorary Mention入選。1998年/朝日新聞元旦別刷り-特集「21世紀を詠む」のための連画、『未来の標本箱』制作。1999年3月15日/MMCAのコンテンツ支援事業として採択された『連画メソッドの応用実験』をプロデュース。インターネット(http://www.renga.com/)で公開した。以上(1999年9月)
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