1997/03/16 安斎利洋 見ながら出る映画
(夢)
鎌田さんの監督による作品の撮影が進行している。舞台上で、名前の思い出せない男
優と女優がセックスしているのを、われわれは高い客席から眺めているのだが、
どうも男と女の性器が入れ替わっているように僕には見える。誰もそのことに気
づかない。
ドキュメントとフィクションの新しい融合を目指しているのだ、と鎌田監督が意気込
みを語りはじめた。しかも編集とライブが交錯していて、撮影しながら編集し、
それを観客に見せながら、観客自身を登場させるのだという。
すると、なるほど僕がスクリーンに出てきた。石原裕次郎の歌を歌いながら、パステ
ルで絵を描いているシーン。絵はまるで早回しのビデオのように、高速に仕上
がっていく。この歌を歌った覚えがないし、この絵を描いた覚えもない。が、そ
れはあきらかに僕の声と絵なので、とても恥ずかしい。隣でスクリーンを見てい
るNが「ああいう色の入れ方はタブーだ」と言う。余計なお世話だと思う。
次にそのNが、ビルの谷間の池で泳いでいるシーン。裸なのに(パラサイトイブの映
画同様)乳首や陰毛がない。鎌田さんが、もう1テイクこのシーンを撮りたいと
言う。寒いからいやだと、Nが拒む。
次のシーンで僕は、宇宙連合軍に囲まれた敵役の総統で、しゃべりながら顔の部分部
分が自分になったりほかのものになったりする。巧みなモーフィングだ。雪の降
りしきる現代の桜田門駅のあたり、僕は殺られてしまい、雪の中をよろめきなが
らさまよい、ついに力尽きて倒れる。半ば融けかかった雪に倒れ込むと、まるで
大根おろしに漬かった餅のように自分が見える。
確かに撮影済みの過去と、撮影中の現在に切れ目がなくて、これはすごい作品だ、と
思いはじめたところで、先月若くして亡くなった日本画家の某氏の葬儀会場にこ
こを使いたいという人達が雪崩れ込んできて、やむなくわれわれは撤収にとりか
かった。
(〜夢)
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