1997/06/02 安斎利洋 退化する猿
（夢）
突然、彼女は着替えはじめた。こんなチャンスはめったにないのに、僕はこの部屋に
居続けるわけにはいかないのだ。すぐにでも、猿
のところに帰って餌をやらないと、猿が飢え死にしてしまうからだ。まさに
後ろ髪を引かれる思いで、僕はその部屋を後にする。
道々、すれ違った杉山教授が、片手に鮭の入った握り飯をいくつか持っている。僕が
それをせがむと、杉山教授はしぶしぶひとつ分けてくれた。
猿に、その鮭のまじった握り飯を与えると、彼はまたたくまにそれを平らげた。そし
て、その瞬間から彼の退行がはじまり、どんどん下等な生物に変身しはじめる。
ついには、ほんに数ミリの２体のホタルイカのような生物になってしまった。王
冠状の足が互いにかみ合って、美しい光を放っているのを、僕は悲しいような嬉
しいような気持で眺めていた。
（〜夢）
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