Moppet連画ワークショップ

NTT/ICC

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安斎利洋(ペイントシステム開発)
藤井孝一(サウンドシステム)
牧野純子(衣装制作)
森脇裕之(インターフェース制作)
木原民雄(システム統括)
企画:NTT/ICC推進室、NTT情報通信研究所、安斎利洋、森脇裕之
主催:NTT

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写真撮影:遊佐辰也

線の合奏(安斎利洋)


ひとつの声帯しかもたないひとりの人間は,(特殊な例外を除いて)ひとつの声で歌うことしかできない.人が集い,いくつかの声を束ねるとき,歌はより豊かなハーモニーへと飛躍する.歌うという行為には,そのように他人に向かっていく指向性のようなものがそなわっている.
しかし,描くという行為は孤独だ.絵が描かれる空間には,互いに響き合う筆も,音波の干渉する空気もない.絵は,人間をひたすら内向させる.
「Moppet連画」は,いわば絵画に他人と交歓(交感)するチャンネルを取り戻す仕組であると言ってもいい.
Moppetは当初,床を磨くモップを入力装置とする巨大ペイントシステムをネットワークで結合させる,というアイデアから出発した.その段階から,私にとって興味の中心は,ペイントシステムそのものよりも,ネットワーク上に浮遊する平面にあった.
ある物理的な平面を共有し,たとえばある壁面をたくさんの人の手によって描き尽くしていくという絵の描きかたは,領土の取り合いを連想させる.そのような形の,1+1=1.5というような抑制型のコラボレーションには,なんの意味もない.入力装置をどのように電子化しても,その対象空間が物理的な空間に一意に結合している以上,同様に窮屈な空間であるのに変わりない.
しかし,それがいったんネットワーク上でどこからでも参照可能な空間にかかげられたとたんに,絵はより豊かなハーモニーへと飛躍するはずだ.
プログラムの開発段階で,この仮想平面を管理するサーバーは「TaburaRasa」と名づけられた.タブラ・ラサとは,表面を平らに仕上げた未使用の粘土板である.タブラ・ラサは,絵が描けるだけではなく,絵が干渉し合うという特性も具わるだろう.
今回のワークショップでは,そのような特性をもった平面を実現させるすべての基礎的なパーツが出そろう.平面は,天空を思わせるスクリーンに投影され,入力装置もモップから光学的な位置検出装置に変わった.LAN接続された別なマシンから,コート内の空間での作画との対話も可能になるはずだ.
この非常に大掛かりな装置によって,いくつかの実験プランを遂行することになるだろう.それを通して,アンサンブルが可能な絵画空間とはなにか,というテーマについての貴重なデータが得られることを期待している.

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