はじまらないシンポジウム

まれびとカンブリアン

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HDR photo by Masao KOHMURA

シンポジウムはたいてい、控室での雑談に華があります。本番が始まり伝達の場が立ち上がると、送り手と受け手の分断が生じ、楽屋の面白さは急速に冷えてしまいます。
安斎利洋・中村理恵子の継続プロジェクト、連画・カンブリアンゲームもまた、伝達の場ではなく、生成の場です。あるイメージが気に入った受け手は、すなわち次のイメージの送り手として、同じ循環回路の一部に繰み込まれます。
そこで、カンブリアンゲームプロジェクトの2009年をしめくくる実験は、シンポジウムが「はじまらないシンポジウム」です。 どこまでいっても登壇しないゲストをお招きし、控え室のようなゆるやかな生成的な場で、人と人、話題と話題をつなぐ「まれびとカンブリアン」の座を企みます。座に着いたゲストによるごく短いツィート(話題提供)を種にして、その人の話につけたい人の話が、ゆったりとつながっては離脱していきます。「人」と「話題」を素材にしたブリコラージュによって、カンブリアンゲームの樹のような連鎖反応の地図を育てていきます。 一貫性のない創発的対話の快楽に溺れる4時間。安斎・中村は、今年一年の活動に関連して、トロル、触覚的自我、AR、たぶれ、BMI、古武道、宇宙人と芸術交流、twitter、などの話題を用意してゲストを迎えます。会場には、twitterのタイムラインを投影します。はじまらないシンポジウムの楽屋を目撃したい方、その場との相互作用をtweetしたい方、ふらっとご参加ください。

ホスト:安斎利洋・中村理恵子  ナビゲータ:木原民雄

ゲスト: 飛鳥井正道,石塚徹,稲垣諭(東洋大学),犬塚潤一郎(実践女子大学), 小川克彦(慶應義塾大学),幸村真佐男(アーティスト、中京大学),小林龍生, 高野明彦(国立情報学研究所),登崎榮一(アーティスト、モナシュ大学), 西野順二(電気通信大学),古川柳子(テレビ朝日),光島貴之(触覚画家), 三宅芳雄(中京大学),みやばら美か(アーティスト),内田洋平, もりやひでよし(慶応義塾大学・SFC在学),渡井大己(早稲田大学在学), 舘野泰一(東京大学大学院博士課程),安斎勇樹(東京大学大学院修士課程)

協力:ワークショップ部(東京大学)

日時 2009年12月26日(土)13時00分~17時00分(開場12時30分)
会場 パナソニックセンター東京 会議室4~6
http://panasonic.co.jp/center/tokyo/
主催 アーバンコンピューティングシンポジウム実行委員会
特別協賛 パナソニックセンター東京
対象 一般(どなたでも参加できます)

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まれびとによるさえずりはじめ140文字(ぐらい)

●飛鳥井正道
ミッションは、自分を知ること、人と人の心を繋ぐこと。人間の知能・視覚・感情・無意識などの工学的応用に関わるものの未だ得られず。現在はフリーでカウンセリングとコンピュータ&ネットワークを繋ぐことに苦悶中。毎年七夕の頃にお寺に500個の風鈴を吊るす風流または異次元の世界を実現中。

●石塚徹
◎万葉の代に想いをはせつつ、科学、技術、文化、風土、身体を結ぶことばを模索中。◎『JAPAN NOW』(ホテル客室常備誌/オンライン)を軸に、ハローネイチャー・カフェを展開中。一坪の地球、一品百珍、然屋本舗、絵本座、歌葉会などの企画をもって遊ぶ。

●稲垣諭(東洋大学)
現象学者。皮膚の表皮は核を失った細胞の死骸である。とすると人間は死骸に囲まれ、それをばらまきながら生きているらしい。周りが流れ行くなかで同一的な実体は奥歯の詰め物くらいであり、銀歯が無口になるのも十分頷ける。世界の表皮を剥くこと、それが現象学の核心であり、私のライフワークである。

●犬塚潤一郎(実践女子大学)
比較文化・比較思想を志向してから30年を経ましたが、その間あれこれと趣味/仕事に集中し、何者にもなっていません。80年代末に、自分が追うものに風土学と名前をつけ、すでに確立しつつあるベルクさんを知りました。中村さん、安齋さんにお会いして、最近は“囲い込み”について考えています。

●小川克彦(慶應義塾大学)
今週の授業ではネット時代の生き方をお話しました。次の名文句を参考にさせてもらいました。「孤独に歩め、悪をなさず、求めるところは少なく、林の中の象のように」(イノセンスより)「だけど私は情報の並列化の果てに、個を取り戻す為の一つの可能性を見つけたわ」「好奇心、多分ね」(笑い男より)

●幸村真佐男(アーティスト、中京大学)
今はHDR(High Dynamic Range)撮影にどっぷりです。写真撮影のスタイルが一変しました。基本は3脚を使っての撮影ですが、手持ちにも挑戦しています。段階露光した9枚を1枚のHDR合成画像を得るのにsoft-workが最低30分位の時間がかかりますが2度おいしい感じです。懐かしい昭和の夕陽のような絵画的写真も得られます。不可視の画像が浮かび上がったりもします。写真的リアリティーの変容が隠れたテーマになります。

●小林龍生
「マンデルネット86」「ターボグラフィックス」「小学六年生」でドラえもん担当。ユニコード。ATOK監修委員会。少数派言語を記述する文字をインターネット上で生き延びさせること。クラシック音楽、オペラ、歌舞伎、落語。電子聖書、平行物語論。書物の物理的解体と電子化。

●高野明彦(国立情報学研究所)
情報の集積を計算機構(連想計算)へ変換する方法に興味あり。連想計算による新しい検索(連想検索)、要約(特徴語抽出)を使って、連想する情報サイト(WebcatPlus、新書マップ、じんぼう、想・IMAGINE、etc.)を構築。趣味は本屋めぐり、神保町散歩、音楽を聴くこと。

●登崎榮一(アーティスト、モナシュ大学)
メルボルン在住の大阪人。ジャズ、絵画、哲学 を通じリズム遍歴は紆余曲折。ドラミングに想を得た構成的ドローイングと脳内セラピーを自身をモデルに実践中。大学では絵画空間に於けるイメージ論をランガー、フッサール、ヴィトゲンシュタインに則って研究していることになっている。特技コンパクトデジカメ抜刀術。

●西野順二(電気通信大学)
ファジィ理論システム科学制御工学ゲーム理論機能文法マルチエージェントサッカー天才プログラマルービックキューブ魔法と受容ジャグリングスキルトロニクスロボットハンダ付け人間コンピュータトポロジー構造主義囲碁航空工学GPGPU大貧民単貧民Cアセンブラrubyパズル。自分に関係のありそうなキーワードを140文字くらい書き連ねたら、自分でもなんだか分からなくなってしまいました。いちばんはジャグリング、次がプログラミング。

●古川柳子(テレビ朝日)
六本木のテレビ局で報道番組創ったり、デジタル化やクロスメディア編成を担当をしたりしてきましたが、2003年からはメディア論の学徒として、本郷の大学院にも出没中。関心は時の流れと共に節操なく拡散し続けてきてますが、括るとすれば、ヒトやモノやコトの繋がり方に関心あり。最近のマイ・ブームは秀逸なコミュニケーション装置としての茶道と、卓抜なメディアとしての織物・・・て、ところかな。

●光島貴之(鍼をするアーティスト/触覚画家)
10歳までの風景は、半径1メートルだった。それ以後、太陽の光はまぶしそうな暖かさだけになった。さわることでもののかたちが、聞くことで、街の広がりが分かる。最近のおもしろい体験は、絵画を前にして、言葉を交わすとぼくにも絵が見えてくるということ。

●三宅芳雄(中京大学)
半世紀ほど前の話ですが、千葉の浜辺に近い小さな家の縁側で6歳の男の子がガラス玉を見つめていた時、突然、そのガラス玉の中に浮かんでいる小さな泡の中にもこの世界と同様な世界があるのかもしれないことに気づきました。その子は私なのですが、この事実についていろいろ考えたりするが好きです。

●みやばら美か(アーティスト)
今年はじめたもの、パンつくり、杖道、編み物(今日から)です。デジタルの世界も心地よいのですが、脳が喜ぶのは身体をともなったもののようです。私の基礎は林檎農家の娘として農作業をしながら獲得したものだと思います。次の面白いことがどこにあるのか探し中です。

●内田洋平
3-6歳、2000冊の絵本読・破、9歳、デカルトに帰着。気づくと、明晰夢に傾倒する中学生、商売に精を出す高校生に。21歳、入不士基義、22歳、井筒俊彦と出会い「哲学」と抱き合う。23歳、そうだ。手を動かしたい。そう思った矢先に安斎氏と出会う。只今、寝言の摩訶不思議にタブレている。

●もりやひでよし(慶応義塾大学・SFC在学)
キックボクシングではプロのリングにも上がったことのある格闘技好き。仕事ではiPhoneなどと連携するハードウェアの開発をしています。あと http://bit.ly/7Qu1E0 みたいなものも作りました。慶應SFC在学中。小川克彦先生の授業大好きです。履修しています。単位ください。(140 字)

●渡井大己(早稲田大学在学)
今年一年は安斎先生の”実験”のモルモットになり、来春からは草原先生の下、新設大学院においてモルモットになる予定です。ARやBMIなどの先端テクノロジーの先で、人間や社会がいかに変容するかをスケッチしていこうと目論んでいます。ただ最近は、後輩と共に変態楽器の制作に勤しんでいます。

●安斎勇樹(東京大学大学院修士課程)
人と人との相互作用から学習や創造が生まれる「場」に関心があります。今はワークショップのような創発的共同活動で起こる「学習」について研究中。今回は場の記録係でもあります。場を即時的に記録し、その記録が新たな場を生成し続けるような場と記録の相互作用を楽しみたいと思います。

●舘野泰一(東京大学大学院博士課程)
どうしたらよい学びの場をつくることができるか?を考えています。ここでよい場とは、人と人とが自ら持っている役割を超えて、対話を通じて、わかったり、わからなくなったり、なにかが生まれたりするような場です。場作りの出来る、教育・学習の研究者になりたいと思っています。

●牧村真帆
私は大学で建築を学びましたが、外側のかっこよさよりも、その空間に人が居る風景の面白さにひかれ、それが見たくてワークショップを始めました。面白い風景が生まれるために場の力が重要であると同時に、場の力は人の存在やつながり、かつどうや仕掛けによって引き出される、という相互作用にずっと関心を持っています。

●木原民雄(NTT)
近頃は繰り返すと飽きることについて思う日々。専門は創造や表現に向かわない日常生活のデザイン。ひとという単位を消滅させる手法を研究中。特技は非決定、停滞、雑駁に耐えること。緩衝帯。好きなものは再起動がかかった直後のメモリ空間。趣味は展示会説明員。歴史と散策。尊敬する人は高町なのは。

●中村理恵子(アーティスト)
100号の油絵キャンバスを巨大なスケジュール帳にしてしまい、LANケーブルがはうなか最近は、72の形がある古武道に創造性を発見してめちゃくちゃのめっています。創作、創発、対話、争闘、型、表現、などに反応します。

●安斎利洋(システムアーティスト)
システム職人。CG創生期にペイントシステムを作ったこと、連画をはじめたこと、プラネタリウムに落書きしたこと、大学でワークショップを遊び始めたこと、まれびとカンブリアンを企画したこと、これらはみな、職人の手のなすがまま「システムを生み出すシステム」を作ろうとする本能のせいでした。


Twitter #cambrian2009
http://togetter.com/li/2296


ツイートマップ

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ツイートファシリテーター報告@東大ワークショップ部

http://mind-set.jp/contents/blog/2010/01/twitter-1.htm


企画メモ

安斎コンセプトメモ

たとえば放課後の教室、シンポジウムの控え室、パーティー会場、飲み屋、そうした場でのよもやま話から、僕らはどれだけ豊かなイメージやアイデアを得てきたことでしょう。「まれびとカンブリアン」は、そうしたよもやま話、うたげ的な対話を模倣し様式化する試みです。カンブリアンゲームがうまく作動するのは、それがリアルな文化の雛形であり、テクストがテクストに影響を与える連鎖の原理をそのまま写し取った様式だったからです。同様にして、飲み屋や控え室の創発性を掠め取ろうというのが「まれびとカンブリアン」の主旨です。(2009年12月15日 安斎 )

中村のイメージ

三々五々、多彩なゲストたちを投じて焚き火の番をするホスト、ナビゲータたち
寒山拾得

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