連画「私の輪郭」は、詩歌からイメージへと受け継がれる電子的な対話の試みである。 1995年の暮、俵万智、中村理恵子、安斎利洋の3人によって編まれたこの作品は、正月を詠んだ三首が電子メールによって中村と安斎に届けられたところからスタートする。
初恋の人の名前を思い出す年に一度の「お元気ですか?」
せり、なずな・・・七つの草に忍ばせて伝えてみたき言の葉がある
祈願終えて春の光を踏みゆけば少し濃くなる我の輪郭
俵万智
このうちの一首を種として、三往復六作品が発芽した。共同通信社の1996年正月特別企画として全国の新聞社に配信され、主な地方新聞の元旦の紙面を飾った。
解説
連画解題
#1
中村理恵子
青い人-ひざしの温度
「春の光を踏みゆけば、少し濃くなる我の輪郭」に着想を得て、まだ弱い春の日差の中に立ちながら、「少し濃くなる」と感じている人物とその影を表現した。
#2
安斎利洋
私の光る髪
春の光を背後にうけて、自分の影を地面に見ている人。その人物を前面から眺めたら、逆光によって照らしだされた髪の輪郭が美しく光るに違いない。
#3
中村理恵子
ふたり
熱いハートを抱いた人物が、もう一人配される。輪郭の周囲には、オーラのような色彩がただよっている。
#4
安斎利洋
眼が@
右側の人物の大きい眼を活かした肖像。キーボードのPの隣にあるアットマーク(@)のような、くりくりした眼がすてきだ。
#5
中村理恵子
デジタルな微笑み
肖像を左右反転してみたら、お馴染みの「モナリザ」が見えてきた。インターネット上の美術館 WebMuseum, Paris からジョコンダを連れてきて、重ねた。
#6
安斎利洋
マドモアゼル・リサの部屋
モナリザ(マダム・リサ)をちょっと若返らせて、マドモアゼル・リサに。服装も変え、背後に広がるあの荒涼たる風景から、あたたかい室内へ連れてきた。