オルランドの夢
Dreams of Orlando




「オルランドの夢」は、中村が見た夢の風景から出発する。を記述したテキストを種に、1994年6月に開始され、1995年2月現在未完のセッションである。フロリダ州オーランドのSiggraph'94会場にて行われたライブ連画で、一往復2作品(OR06,OR07)がリンクされた。



 

■ OR01 靴の形をしたホテルをめざして
Heading for a hotel in the shape of a shoe
安斎利洋
Toshihiro ANZAI 1994/06/15

夢のテキストを何度も咀嚼するうちに、他人のみた夢なのか自分のみた夢なのか、わからなくなってくる。蛇行した街、赤い建物の群れのなかで、紛失した靴のイメージがどんどん肥大する。

 ■ OR02 夢のスゥイング
Swinging in a Dream...
中村理恵子
Rieko NAKAMURA 1994/06/18

赤い街には、甘い香りの水が流れていた。そして夢の中の風景は、実体のある建物や人々をからめとって、漂う空気やにおいと解け合って、もっとゆらゆら揺れていたはずだ。

 

■ OR03 山水に囲まれて
Surrounded by Caligraphic Landscape
安斎利洋
Toshihiro ANZAI 1994/06/19

OR01で描ききれなかった、バルコニーに背もたれている人を、なんとか画面に登場させたかった。OR02のダイナミックな運動をおさえて、静かな背景にすることからはじめてみた。

 

■ OR04 ささやく らんらんららら荀荀
La, la, la, la, la
中村理恵子
Rieko NAKAMURA 1994/06/30

両肘を後ろ手にして、バルコニーにもたれた異国の女性は、眼下に流れる大河の水煙の中に見え隠れする。

■ OR05 片羽根の天使たち
Incapaciated aerialistes
安斎利洋
Toshihiro ANZAI 1994/07/11

後ろ手にまわした手が、翼に見えた。そろそろイメージは夢のテキストを離れて、羽ばたきはじめている。

 

■ OR06 クァルテット
Quartet
中村理恵子
Rieko NAKAMURA 1994/07/25

フロリダ州オーランドにて、観衆の中で完成した一作。楽しそうな三人の天使に四人目を加えて、四重奏が始まる。熱いブルーの渦が、セッションの躍動を伝える。

 ■ OR07 まぶしい水浴
Dazzling figures submerged in a brook
安斎利洋
Toshihiro ANZAI 1994/07/26

SIGGRAPH会場で描かれた二作目。オーランドのホテルのプールは、四六時中歓声に満ちていた。フロリダで触れた空気、光、色、形などなど。

 

■ OR08 ストーファのサウナは恐い
Frightening emanations from the Stouffer's sauna
中村理恵子
Rieko NAKAMURA 1994/09/11

右上の二人を拡大する。スティームにけむる人の気配、会話、はしゃぐ水しぶき。

 

■ OR09 「六番町の木立」
Boulevard in Rokubancho,Tokyo
安斎利洋
Toshihiro ANZAI 1994/12/04

華やいだ人の気配を、人気の少ない景色に転調してみた。

 

夢のテキスト

"とびきりステキな夢みた"
Name:  Rieko #610
Date:  8:14 am  Sat Apr 16, 1994

ぬかるんだ校庭を通り過ぎて、傍らに草の生えた道を歩いている。
わたしは左足に靴をはいてない。どこかで買わないと。
ひょいと左方向に目をむけると、なだらかに蛇行した地形にはりついて
赤い建物の群れがある。

「なんてステキな建物の群れ!」

町に入っていく。見えかくれする路地は、中庭のような親しさをもっていて、
人々はみえかくれしながら、歩いていたり、休息していたり、そして不思議
な外国語を話している。
突き当たりのレストランに入り「ここは何時までやってるか?」と、わたしは
強引な何語かで訊ねる。「…………じゃ後で連れと来るから」

カタコトの日本語をしゃべる若い女性が現れて、近辺を案内しはじめる。
アラブ世界とスペインの狭間のような雰囲気。
わたしは、はだしの左足に、安くてステキな靴がほしい。
店を教えてほしいと思ってる。

彼女の案内してくれる路地は、まるで16世紀のフランドルの色彩で、深いグリーン、
漆喰の赤、黄色。そして雨に濡れたような、甘く淀んだ空気。
なつかしい風景。

ふと視界が開けて、川が流れている。青くて、緑で、深い色彩を漂わせて静かに
ゆっくり流れてるらしい。わたしは、高台の赤い建物の群れから飛び出したバル
コニーから、それを眺めている。
案内の若い女性は、バルコニーに背をもたれて、何事か話している。
わたしは、彼女のはめこまれた風景を見ている。
わたしは、対岸にあるホテルを指さして「連れと一緒にあとからきたい」とさかん
にいってる。

不思議な不思議な、まるでカタツムリがはっていけそうな蛇行した街。
赤い赤い建物の群。

りえこ

 



Toshihiro ANZAI and Rieko NAKAMURA