■波紋のこと

ある処に、小魚や水生昆虫や蛙等などが住んでいる小さな野池があるとします。
ある日、その池に小石が何処からか飛んできて落ちたとしましょう。
水面には、落下地点を中心に外周へと広がってゆくきれいな波紋が発生します。
その波紋は、減衰しながらも池の表面を覆ってゆきます。
さて、その池に杭や、立木のような障害物が在ったりすると、波はそれに当たって反 射して其処を中心にまた小さな波紋を生じされるでしょう。
その二つの波紋は互いに干渉して新たな紋様を描きます。
実際には、一つどころか沢山の杭や葦などが在るわけですから、その波紋の干渉のパターンは刻一刻と様相を変えながら水面を多い尽くすことになるでしょう。
こんな野池が其処には沢山在ってそれぞれが水路でつながています。
最初の小石の波紋がそうした水路を伝わって隣の池に伝わることもあるでしょう。
最初の波紋の原因も様々ですから波紋の大きさもまちまちです。
また、その付近で雨が降った場合や、大風が吹いた場合は、全ての池の水面は一様に 乱れて泡立ってしまうこともあるでしょう。

しかし、一番好きなのは朝マズメの鏡のように静まりかえった湖面のイメージです。
そこに発生した一瞬の擾乱が描く波紋の干渉紋様に一筋の最初の朝日が、差し込んで きて虹色に揺れ動く様が何といっても最高です。

このイメージは、結構気に入っていて、野池の杭を「人」になぞられ、小石を「事件 」に見立て、波紋を「情報」ととらえて広がってゆく水面の波紋の干渉パターンを幻 視することがよくあります。
それはなかなか美しい光景で、同じ紋様は一度として現れることはなく、見飽きるこ とがありません。
情報の伝播というのは、このような美しい光景であって欲しいものです。


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