北京連画は、中国西安に住む現代書家の高峡と、ネットワークアート「連画」を育てる日本のアーティスト中村理恵子・安斎利洋による、漢字の象形を探るコラボレーションである。
中村理恵子・安斎利洋による連画は、デジタル画像としての絵画をネットワークを通して相手に送り、これまで困難だった「他人の作品そのものに手を加えること」の可能性を遊ぶ新しいアートのスタイルとして評価されている。(詳しくは連画サイトを参照)
このデジタルならではの方法に、中国の書をクロスさせ、デジタルとアナログの不可逆の対話の可能性を探るのが、北京連画のひとつの焦点となっている。
北京連画は、西安と東京に隔てられた作家が、作品を物として送りあう前半と、3人が北京に会し衆目のなかで作品の対話を完成する後半とにわかれる。北京連画のスタートをきったのは、高峡による2点の「魂」という書である。篆書と甲骨文字で書かれた2点の魂は、東京の二人によってデジタル作品に変換される。そのプリントアウトは西安に送り返され、高峡による第三世代に受け継がれる。
第四世代から第五世代は、インターアート協会・中国包装技術協会の招聘による「ビジョン・クエスト1996北京」展の会場での、ライブセッションという形で進行する。会場に持ち込まれたCG環境によって、書はデジタイズされ、ペイントされる。そして楮でできた画仙紙へプリントされ、再び書へ。
北京連画は、中国と日本、伝統と新技術、文字と絵画、情報と墨といった異質な要素の衝突する狭間で、「かたち」を共通項とした幸福な対話が織りあげられた記録でもある。(u)
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