Aiolos Project

風のコラボレーション(プラン)

1996年に企画、準備を進めるが、予定されていたスポンサー獲得に失敗し未実装。

 

Aiolos Project
アイオロス・プロジェクト

風のコラボレーション

空中に渡された弦が、風の力によってかすかにふるえ、音をたてる。この神話上の楽器「アイオロスの琴」を電子的に再現し、インターネットを用いて日本全国の風の交響を聴こうというのが、アイオロス・プロジェクトの骨子です。

日本列島の何個所かに敷設した仮想「アイオロス・ハープ」の振動は、「アイオロス・サーバー」に集められ、そこで音響になります。この音は、アイオロス・プロジェクトのホームページからリアルタイムに聴くことができます。また、風データと連動して音の出るオブジェをコンサートホールにちりばめ、ミュージシャンが風の音響との対話による即興をくりひろげるコンサートを開催することができます。

気、気配、といったものから疎外されたインターネットに空気の流れを回復し、風を巡ってさまざまなアーティストがコラボレーション展開するためのインフラストラクチャーを作るのが、アイオロス・プロジェクトです。

たとえば1997年の秋、台風が日本列島を縦断するある日、ネットワークに接続された風の弦が交響の時を作り出します。強い風が列島を吹きぬける一夜、インターネットが美しく鳴るのを聴くことができるでしょう。

アイオロス Aiolos  ギリシア神話。風神の王。浮島アイオリアに住み,その6人の息子と6人の娘も互いに結婚して父とともに住んでいた。さまざまな風を袋につめ,時季にかなった風を出す。アイオロスの琴は、風によって音を発する。

アイオロス・システムのしくみ

◆バーチャル・ハープ・モジュール

屋外の電子風向計からの風向と風力の信号は、アナログ・デジタル変換され、パソコン上のシミュレーションプログラムに入る。
プログラムには8本の仮想の弦があり、風の方向と強さによって、それぞれエネルギーを与えられる。エネルギーの蓄積によって振動がはじまる。また風のあたっていない弦の振動は、自然に減衰する。

◆音源1 MIDI音源モジュール

ハープ・モジュールからの各弦のデータは、MIDI信号化される。MIDI音源を接続して、風に共振したハープの音を聴くことができる。調弦は自在である。

◆音源2 物理音源・モジュール

ハープ・モジュールからの各弦のデータを、ソレノイドを通して物理的な弦(実際には鉄の棒)の振動と、光によるディスプレイに変換する。屋内に設置されたこのモジュールが、屋外の風に共振して鳴る。

◆ネットワーク・モジュール

ストリングス・モジュールで生成された弦の振動データは、TCP/IP(インターネット)によって遠隔地のアイオロス・サーバーに転送できる。サーバーは、各地のデータを総合し、リアルタイムでいくつかの出力を出す。
ひとつは、ホームページから配信されるjavaアプレットからの接続を受けて、各地のハープの振動を視覚的に表示するためのデータ。

◆アンサンブル・モジュール

もうひとつは、それぞれのハープからの情報をもとに、音楽家のプログラムした音響コンポーネントを鳴らすための情報。音は、電子的な音場に配置され、オーディオ信号化する。この音信号は、リアルオーディオによってホームページから流すことができる。

◆コンサートホール

サーバーに集められたアイオロスハープの情報を、複数のフィジカルモジュールに再配信する。それをコンサートホールのあちこちに配置し、その中央で静かなピアノの即興が奏でられる。

◆連動プロジェクト

アイオロスプロジェクトのサブプロジェクトとして、「風の音楽史」というトークセッションをシリーズで行い、ホームページ上に連載していく。

Toshihiro ANZAI solo works |