rhizome: 靴底

パズル的な神事

白い人が集まり、宮司が神事を執り行っている。長方形の入れ物の長辺よりもさらに長い木の棒を、皆の手によってうまく収納しなくてはならない。このパズルを解くことが、神へ通じる巧みなのである。だからここでは、タンスをエレベーターに斜めに入れて運ぶ引っ越し業者がいちばん神に近い。
祭りが昂揚し棒が高く揚げられたところで、宮司が僕を手招きする。自分は引っ越し屋ではないからとためらいながら近づき、皆とともに棒を担ぎ上げると、足もとの地面はベルトサンダーの回る布やすりで、黒い革靴の底をどんどん削り取っている。数年ぶんの摩耗を使い果たし、帰路ふと靴を見下ろすと、削られたのは靴底ではなく靴の上面で、ところどころ薄くなってしまった革から素足が透けて見える。

(2013年2月10日)

五線譜の川

河口付近の三角州地帯に住んでいると、ラッパ形の噴出機が絶えず砂を撒いているので、自分の敷地と他人の敷地の境界線はいつも砂に覆われしまう。いつのまにか部屋に紛れ込んできたルームサービスが、冷蔵庫をあけて「ビールはいかがですか」などと言うが、それは僕の私物だ。靴底でベランダの砂を払うと黄色い地面があらわになり、そこには小節の区切り線があらかじめ引かれた五線譜がある。

(2013年1月20日)