rhizome: 電話

ち+ユさん

体育館の底の小部屋で伊藤澄夫ら仲間とヘッドマウントディスプレイをつけて遊んでいると、VR世界にちえみさんとユカさんの混合した懐かしい人格が顕われ、大はしゃぎでお腹痛いの治った?と下腹部を撫でるとVRのち+ユさんは笑いながらうっとりしている。体育館の外は夕方の日差しでふたり坂道を降りながらこれからどこに行こうかという矢先に伊藤澄夫の背中にあった1本ショルダーの布製バッグを僕が抱えてきてしまったことに気づきち+ユさんは小さいけど上質のバッグねといいながらバッグを撫でている。チャックの中からトランシーバー状のオレンジ色のいかついケータイを取り出し白黒液晶画面に登録された友人を繰ると安斉工務店などと書かれているがこれを呼び出しても何にもならないから体育館に連絡するのがいいんじゃないとち+ユさんが言う。

(2017年10月1日)

旧式UI

スタジアムの観客席斜面から、床下の階へ潜る洞穴があり、ラジオカセットテープレコーダーや電話機がぎっしりと穴を塞いでいる。パジャマを着たInomataさんがダイアルをいじっている。これを開けないと帰れないと言うのだが、ひょっとしてダイアル電話の使い方がわからないとか? まさかそんなわかりますよ、そういうことじゃなくて、といいつつダイアルの穴を押したりしている。

(2017年3月27日)

水疱の花びら

裸の自分の皮膚に、暗い赤色の花びらが無数についている。それはよく見ると、変色した自分自身の水疱だ。いつもなら気持の悪い事態なのだが、花びらのすばらしく深い色彩が美しく、うっとりと眺めてしまう。
自分は死ぬのだ、その兆候なのだ、ということを知らされたばかりなのに、あまり衝撃がないのは、この色彩のせいだということはよくわかっている。しかし、このことは父親には知らせなくてはならないと思う。父親に電話をかけなくてはならないのだが、十五年前に死んだ父は携帯をもっていない。ダイアル式の電話を探すために、あちこちの乾いた地面を掘ってみるが、なかなか電話にあたらない。

(2004年3月3日)