rhizome: 闖入者

棲みつく俳優

赤いちゃんちゃんこの室井滋が、炬燵でれんこんを食べている。部屋の主は別の女だが、室井は女の行動を完全に把握しているので、不在のあいだこっそり入り込んではくつろぐのが習慣になっている。部屋の主が外出する影が窓をよぎるのを、室井が見ている。鍵はどうしたのか、と尋ねると、部屋は撮影のセットだから、半分外に開いているから、とカメラ目線で室井が説明し始める。

(2015年3月7日)

時間を超えた同居人

僕の部屋に、二人の闖入者がいる。厄介なことに、自分自身が闖入者でないという自信がもてない。見知らぬ男が二人、そして自分の合計三人、このなかの誰か一人がここの持ち主で、あとの二人はウソをついている。困ったことに、誰一人ウソをついているようではない。
この中の二人は、タイムスリップで現在にやってきてしまったのではないか、と一人が言う。全員がここの主であるが、それぞれ別の時間を生きているなら説明がつく。きっとそうに違いない。では、今現在の持ち主が誰かはっきりさせるために、部屋の中にある物それぞれについて持ち主を割り出せば、間接的に部屋の持ち主がわかるのではないか。
しかし、床に並べた小物をひとつづつ検証していけばいくほど、三人それぞれの主張する所有物がほぼ均等に配分されてしまい、ますますそれぞれの浮遊感が増していくのだった。

(1999年8月27日)