rhizome: 邪心

巨大トマトの娘

砂でできた巨大なさいころの中腹に洞穴があり、奥に行くほど狭くなる。ホーンスピーカーの奥を覗くようにして、Sとともに入ってきたこの砂のホテルの受付に料金を尋ねると、宿泊するなら夜11時以降にもう一度来るように言われる。奇跡のようにここまで来たのに、ふたたび砂のホテルの外に出て彼女の家まで歩いていくことになる。初めて会う彼女の父親は巨大なトマトを育てていて、ひとつ食べてみないかとすすめられるが、あまり旨そうではないそのトマトを一口かじって、絶対に食べきることのできないサイズのトマトを結局食べ残すならどこで残しても同じだということに気づいて、トマトにしては変にぶよぶよなその大きな物体を放置することにした。さてそろそろまたホテルに向かおうかとすると、弟か子供かわからない男の子が妙に僕になついてしまい、いっしょに門を出たところでじゃあここでばいばいね、と言ったとたんに泣きじゃくり、こんなに家族と仲良しになってしまっては彼女に邪心をいだけないではないかと困惑するのだった。

(2003年7月8日)