rhizome: 蛇

螺旋詩

連句の持ち番がまわってきたので、一本の棒に蛇がからまっている図を描いた。螺旋を立体的に描くためには、前後の重なりを計画的に描かないとうまくいかない。技巧を凝らしたその句を次の西田裕一さんに渡すと、ここはやはり画像ではなくプレーンテキストでもらいたいのです、と言う。アンドロイドに入った電子辞書を繰りながら句を捻るが、絡み合う螺旋状の言葉がどうしても見つからない。

(2013年5月24日)

多関節蛇列車

巨大な多関節蛇型列車が、竜のように形を変えながら高島平の発着場に降りてくるのを待ち受けようと気が急いている。北端の崖を走り降り、自転車を乗り捨て、線路脇に張られたピアノ線の縄梯子を注意深く踏み外さないように登りはじめる。

(2011年7月19日)

蛇は仲間だ

すっかり傷んだフローリングの床は、ところどころ体重を支えきれないほど危うくなっていて、うかつにたわんだ場所に足をかけると、すっぽり踏み抜いてしまう。床下には意外に深い空間があり、光が差し、冷ややかな空気が流れている。そこには真新しい床があるのだから、だったら一段降りて移り住んでもいいじゃないかと思う。
冷たい床下の床に、赤と白のまだらの蛇がいる。蛇を殺してはいけない。だから、ゴミ箱をそっとかぶせておくことにした。あとでゴミ箱の下に薄い板を差し入れ、そのまま板ごとずらして外に出せば、蛇に触れることなく蛇を逃がすことができる。
拳銃をもった男たちが雪崩れ込んできて、僕は拘束される。男がゴミ箱を持ち上げると、コブラのように頭をもたげた赤白の蛇が男を威嚇する。男がひるんだすきに拳銃を奪い、まんまと逃走に成功する。
蛇はやはり仲間なのだ。

(2000年9月25日その2)