rhizome: 草原

CG学会の宴会

竹内君が持ってきたその作品は直径20cmほどの魚眼レンズで、覗き込むと中に黄色い草原があり、黒い老学者がくるくる回りながらそこを渡って行く。作品にはカタカナのエキゾチックな名前がついていたが、思い出せない。
温泉宿で行われているCG学会の宴会はところどころ強いライトがあたっていて、人間が干物のように乾いてしまう。みな口ぐちにこんな照明の設定はやめるべきだと言っている。しかし光が弱いと魚眼レンズの暗闇に沈んでしまうのではないか、と反論する男もいる。

(2014年10月24日)

火口でバレーボール

山腹の草原には、死んだ猫のまだ生暖かい血が溜まっている。そのすぐ近くで、僕は十人ほどの男女と円陣を組んでバレーボールをしている。和気あいあいと見えるのは表面上のことで、彼らは僕を拘束に来た連中だということを、僕はとっくに知っている。ふと眼下を見下ろすと、ここは巨大な死火山の山頂で、遠くカルデラ式の火口内面が緑色に霞んで見える。この状況にふさわしいBGMが流れてきて、こみ上げてくる号泣を喉元で砕きながら、こういう感傷的な音楽は好みではないし、そもそもこの配役は自分に似合わないと思う。

(2000年10月6日)

万能スノーボート

新種のスポーツだ。スノーボートのようだが、湿地、田んぼ、草っぱをぐんぐん滑っていける。簡単で気持ちがいい。本当はもっと別な、もっと難しいことをするつもりでここに来たのだけれど、日も沈みかけているし、ちょうどこの程度が楽しくていい。そう思っていると、小島陽子さんが、
「私が今日買うとしたら、これかしら」と、もう買う気でいる。それじゃ、プロの**さんに紹介しよう。
部室のような狭いところで、名前を思い出せない彼は、草の上を走るのは邪道だというようなことをさかんに言いはじめる。
「それは、本格的なものはこの程度じゃない、という意味ですか?」
「そうだ」とプロ。
小島さんが、買うか買うまいか、悩みはじめてしまった。

(1996年7月13日)