rhizome: 素描

生物教室放出品

古いコンクリート造りの校舎で、生物学教室の廃棄品を放出している。染色液が漏れたプレパラートや、青く変色した児童文学全集がある。各病院から二人までと言われているが、無関係の自分や女子高校生が紛れ込んでいても咎められることはない。根元から折れた水晶の柱は、断面がつるつるになるまで磨滅している。道に埋められていたからだろうか。女子高校生が手にとると、水晶の下から顕微鏡のXYステージが現われる。女子高校生とじゃんけんをして手に入れる。ただ、彼女はじゃんけんの原理がわかっていなかったかもしれず、腑に落ちない顔をしていた。ツマミを回すと驚くほど滑らかに上台が滑る。先端に穴のあいた彫金用スクレイパーをポケットに入れる。
何枚もある素描を見ていると、老いた女が「この絵は息が詰まる」という。これは死んだ画家とその弟子が描いたものだが、どちらの絵がそうなのか尋ねると、女は黙ってしまう。彼女自身、山下という画家のゴーストペインターだったと言う。
地下室に陽が当たるのは、地上から掘られた深い崖底に出るガラス戸があるからで、外に出ると地上に続く坂がある。大和田さんが、地上までの坂道をバギーに乗せてくれる。

(2015年12月15日)