rhizome: 氷

ロケットランチ

東洋大学の学食はシステムが複雑すぎる。トレイに料理を載せ、お金を払うまでに何度も躓いてしまう。馴れている稲垣さんはとっくに食事を済ませ、休憩所で昼寝をしている。頭上を日立製作所の試験線路が走るベンチに陣取り、食事を始めると、ロケットエンジンで走る試作車両が豪速で走り抜け、そのたびに液体燃料タンクに付着した氷が解けて昼食トレイの上に冷たい水滴を落としていく。

(2012年12月22日)

川越氷河

積雪で通れなくなった川越街道の雪が、氷河のようにゆっくり動いている。ここは快晴だが、上流の大雨で決壊した石神井川の水が氷の下部に流れこんでいるためです、と、駆けつけたそらのちゃんが淡々とustream中継している。

(2010年9月16日)

氷型

われわれのバンドはメンバーが三名で、ひとりはLArcEnCielのボーカル、もうひとりは図体のでかい中山真樹らしき男、そして僕。次のイベントにむけて等身大の裸体像を作ることになり、これから型を抜く。中山真樹がまず矢面に立ち、全身氷で覆われる。それほど寒くはないが、氷と皮膚をいっきに剥がす時ぴりぴりと痛み、全身赤い網目模様になるのがつらい、と訴える。僕はバンドの真中なので、順番としては次だ。覚悟を決めているにもかかわらず、用意した氷があとわずかなので、早速製氷するか氷屋から買ってこなくてはならないということで執行猶予になる。小林龍生さんから、特に用事はないが近況を知りたくて、と電話がかかってくる。実はかれこれこういうわけで自分の型を抜くところだ。それは、自己のイメージを客体化する良いチャンスだ、とかなんとか話しながら、さてどういうポーズで型を抜くか思案をめぐらしている。座って両腕を両腿に挟もうか、思いきり立ちあがって股間を手で隠そうか、などなど。

(1999年5月31日)