rhizome: 水越伸

中洲宴会

自宅裏手の深く切り込んだ崖に、珪藻土の小片を落としてしまう。強力なライトで崖底を照らすと、老婆がまぶしそうに見上げながら珪藻土をこちらに差しだしてくれる。老婆からはライトを持っている人間は眩しくて見えない。駅前の人の流れを分ける小高い中洲で、飯田くんと水越さんが宴をひろげている。歩道橋に陣取った放送ブースの男が、中洲呑みはメディアか、などとめんどくさいことを聞いてくるのでシカトする。遠方に見える自宅の照明が灯台のビームを出しているのを見て、照明は照らされる側にとって暴力だと飯田君がいう。操車場の貨物列車に乗った数百体の彫刻が、シルエットの行列をなしていま動き出したところ。

(2017年12月31日)

食物連鎖ワークショップ

最上階まで吹き抜けになったコンクリートの内壁に、ところどころ抉られた窪みがあり、人が嵌って本を読んでいる。よく知っているはずの建物なのに、この眺めに見覚えがない。水越さんに電話してみると、そこは同じ情報学環でもドメインが違うと言われる。自由落下式のエレベーターで地下まで降り、そのままJの字を描いて隣の吹き抜けに飛び出る。
床いっぱいに広げたロール紙に、何人かボールペンで絵を描く人がいる。それぞれ自然界の何かになり、紙の中にそれを描いていく。それぞれの役割に入出力があり、他のインプットに向かって矢印をつないでいくのだと鳥海さんが言う。僕はイワシであることを宣言し、群がるイワシをいくつも描いた。それぞれのイワシから出る矢印をクジラの目につなぐと、鳥海さんが意外そうに「目なんだ」と言う。

(2015年3月30日)

イーノのオカルト

水越伸さんが、発酵中のパン種をビニール袋に小分けにして持っている。テーブルに置かれたひとつに手を伸ばすと「だめだめ膨らみかけたところだから」と制止される。パン種のひとつを割ると、ブライアン・イーノにつてい書きかけた原稿が開く。「イーノって音楽のほかに何してた?」と訊くので「CGやってたかな」と言いかけると、jaiさんがひとこと「オカルト」とこたえる。

(2014年1月28日)

飴色の水

「飴色の水」という歌がBGMで流れる場所で、飴色のニスで塗られたキューブ型の椅子をルールに則り組み合わせ、空中高くヒトの巣を積み上げるゲームで、僕は水越伸さんと佐倉統さんを抑え堂々の一位に輝く。

(2012年10月21日)