rhizome: 梅村高志

ケータイ旅行

FOMAのテレビ電話でパリの徳井naoさんと話していたら、ボタン操作を間違えて、パリへ自分を転送してしまった。突然入り込んでしまったアパートの部屋で、彼は女性と別れ話の最中で、こういうプライベートな空気にずかずか割り込んでしまうのはケータイの悪いところだなどと間抜けな弁解をしているのが情けない。途方に暮れて歩くパリの町並みは、ところどころ「常盤台行」などといった漢字もあり、なにしろケータイで来たために完全に来きっていないのだなと思う。しかし、パスポートなしでどうやって飛行機に乗って日本に帰ればいいのやら、暗澹たる気分のなか、ひらめくように、そうだFOMAで帰ればよいのだと気づく。電話帳の「中村理恵子」に電話すると、画面がカラーになったり白黒になったりしながらなんとかつながり、こんな状態で転送すると死んでしまうのではないかという不安をいだきつつボタンを押すと、中村理恵子と梅村高志さんが無数に穴のあいた植木鉢を逆さまにして香炉を作る相談をしている庭にたどりついた。

(2004年12月2日)