rhizome: 中野

木箱戦争

中野坂中腹にある屋台では、受付窓から次々と食べ物が提供され、集う同志に食べ方を説明する必要がある。
男は3階建て木箱の3階に布団を敷いて住みつき、監視と戦っている。事情を知らない女が布団に入ってきては裸のまま外に出ようとするので、そのたびに監視に見つかると諭すのだが聞いてくれない。監視は機械群で人間の形すらしていない。突然地面に穴が開きテレビカメラ状の眼で睨んでくるので、飲みかけの炭酸飲料を詰め込んでやる。
最下階の図書館にたむろする中学生は、監禁されていることを知らない。中二階の階段に潜望鏡のモニターがあり、そこに棲みつく鼠がいる。鼠の遺伝子に感染を試みると、鼠は次々と病になり、病の鼠が機械の中枢まで至り、ついに機械の感染に成功する。
かくして木箱のあちこちが壊れはじめ、木箱を操る監視の人影の退却が始まる。監視の影は去り際に、監禁された人間の服をターゲットに色彩の弾を放つだろう。われらはみな服を脱ぎ棄て3階の隅に退避すると、3階建の木箱ははじめて線路上を走り出し、交番の前で止まった。

(2016年5月17日)