Kが来客と話しているのを半ば目覚めた耳で聞いている。誰かが優しい声で「~さん~さん」と寝床の僕に声をかけるが、名前の部分が僕ではない。息子が妙な音楽を聞いている。声部ごとに異なる粘り気を引きずっているので、それが「音楽の捧げもの」だとわかるまでに時間がかかった。それはなにかと尋ねると、3歳に戻った息子は押入れの中に分け入り、ここにあったテープだと言う。昔の押入れから戻ってきた息子は、さらに0歳児まで逆戻りしていて、布にくるまれた顔に顔を近づけると涙が込み上げてくる。
(2013年1月12日)