中華ビルのオーナーはビルの解体それ自体が趣味なので、ビルを一気に壊すようなもったいないことはしない。赤い外装を残し、中身を抜いたスケルトンの持ちビルを、町のあちこちにぶつけながら転がして弄んでいる。電柱などに当たるたびに金属片が飛び散り、目の前にがさっと落ちる。
(2012年12月10日)
中華ビルのオーナーはビルの解体それ自体が趣味なので、ビルを一気に壊すようなもったいないことはしない。赤い外装を残し、中身を抜いたスケルトンの持ちビルを、町のあちこちにぶつけながら転がして弄んでいる。電柱などに当たるたびに金属片が飛び散り、目の前にがさっと落ちる。
女たちは病院の患者のように決められた服を着せられ、見え隠れする恥部や乳房を隠そうともせず、エレベーターAから別系列のエレベーターBへと乗り移っていく。
エレベーターの箱の奥にあるもうひとつのドアから、このビルのオーナーと思しき車椅子の女が、ほとんど人間の体をなさない崩れた塊として現れる。その箱の天井の上に紛れ込んだ僕は、ふわりと金属ワイヤをあやつり、なんとか建物の外に出ることができた。
ビルの傍らを流れる川には、夥しい都市の残滓が流れている。この風景はすでに何度もリプレイされているし、これからも繰り返されることがわかっている。