肺呼吸からエラ呼吸へ

宇宙服を着ている。首回りの防水リングにはまだヘルメットが取り付けられていない。重い宇宙服を引きずるように二階まであがってきたのだが、手は読みかけた雑誌を握っているし、まだ小便もしたい。いろいろ覚悟ができていない。これから僕の頭部にはガラスの球形ヘルメットが被され、内部に液体が満たされ、肺呼吸からエラ呼吸に変わるにつれて小便も自然に排泄され、書き取る前に取りこぼしてしまう夢と同じように、水溶性の記憶だけ水に溶けだしてしまうはずだ。

(2013年7月31日)