濾過屋敷

三階に通じる階段は壊れた家具や古いレジ機械などのがらくたが天井まで累積している。立体パズルを解くようにして隙間を巧みに作り、くぐり抜けられるのは僕しかいないので、がらくたは濾紙の役目をして三階に僕だけを濾しとってくれる。ところが、暗い板敷きの部屋にはすでに子供が何人か入り込んでいる。ここのガラス窓は我を忘れて遊ぶ子供を濾過する性質があるから、ときおり路上の子供たちが滞在しては消える。
一方、曇りガラス越しに見える濾し残されたカスのような大人たちは、得体の知れないこの建物が嫌いだ。彼らはおどけたバックコーラスの男女のように声を合わせ、化け物屋敷と囃したてる。こちらも歪んだガラス越しの曖昧な輪郭の視覚効果を使って、いかにも化け物らしく彼らを威嚇する。

(2013年2月14日)