昆虫食の妖精

近所一帯が、万博会場になる。空き地がないので、民家の屋根より高いところに広大な板張り広場が設置される。おかげで、自分の部屋の窓からひょいと軒を伝って万博広場に出ることができる。昼寝をしていると、布団の傍らで大西瞳とパニックさんが万博企画の打ち合わせをしている。
万博広場にはところどころ桟橋がある。はるか眼下に、地上の池が見える。ケータイを見ながら歩いていると、気づかぬうちに欄干のない狭い橋を歩いている。
板張り広場から池に降りる螺旋階段に、羽虫を口に吸いこむ女の子がいる。彼女は妖精のようだが、昆虫食はこの万博のテーマでもあり、だから彼女はコンパニオンの制服を着ている。コンパニオンの妖精は交尾中の赤い糸トンボの片方をすっと吸いながら、もう片方のトンボを吸ってみないかと僕に勧める。ためらっていると「これはツナの味がするから」と言う。

(2014年1月29日)