古書店の笑う猫

古書店店主の屋敷は板張りの廊下が迷路のようで、それが宗教団体としての威厳と財力を誇示している。僕は、古書店店頭の廉価本を十万円ほど買いあさり、その支払いのためにやってきた。これは果たして上手な買い物だったのだろうか、いくぶん悔いる気持も頭をもたげながら、なかなか店主のいる場所に行き着けない。黒光りする廊下の奥で、赤く充血した眼をかきむしりながら人間のように笑う猫が、こちらを見ている。

(2008年5月17日)