冷凍花束

窓に差し込む照り返しが季節によっていろいろな色に変わる理由を、今日まで考えたことがなかった。大きな花壇のある隣家の住人が、明日引っ越すということで挨拶にやってきて、この家の花が季節ごとに色を塗り替えていたのかと得心する。お別れの寂しさを保存するには生より冷凍のほうがいいから、と言って凍った切花をくれた。
あの花壇はどうするのですか、と訊ねると、卒業して離れ離れになる人々が記念撮影をするのでそのままにしておくと言う。霜のついた脆い花びらを壊さず解凍するにはどうしたらいいか考えていると、卒業する人々から次々凍った花をもらい、大きな霜の花束になってしまう。
荷造りでごった返している隣家を覗くと、塀に大きな穴があいていて、その向こうに広がる極彩色の庭には、厚く塗られた半乾きの油絵具が、植物として繁茂している。

(2001年12月17日)