ドキュメントスキャナの舟

ドキュメントスキャナの4階の客室にいる。底面は快調に滑りながら地面を読んでいるが、90分授業のはじめに最重要部分を過ぎてしまったので、後半をどうするか考えていない。高校の仲間たちと高速船で帰る。4階の高い視点から眺めると、沈殿した靄から高層の菌類が突き出して、見慣れた東京も別世界のようだ。今日見たいちばん幽玄な景色はここだな、と言いながら川俣たちと山水画の北区を過ぎる。4階から白いボストンバッグを引きずり下ろし、部屋にあった白いバスローブを着たままだったので、甲板のキャビンアテンダントに返す。

(2017年5月10日)