キソさんの胸元

玄関の鍵をかけ忘れたまま眠ってしまったので、女たちが何人も入ってきて台所に溜まっている。部屋の隅で眠っている祖母のキソさんが起きてしまわないようにキソさんに覆いかぶさると、ニッキの匂いがする。正面から抱き合ったキソさんは、明るい白地に花柄の空間を胸元に抱いている。これから死に行く人の内部はこのように明るいのだ。

(2015年9月16日)