扇状の階段は上に行くにしたがって傾斜が急になり、そのうえ階段は徐々に角がとれて丸くなるので、いつ階段が段のない滑らかな大理石になってしまったのか、低温やけどのように気づくことができない。
この厄介な壁を登りつめないと、次のステージに行けない。前を行くハイヒールの女は、危うく滑りそうになりながらもなんとか小さい出口から姿を消した。ところが僕は、何度やっても滑り落ちてしまう。サポートの友人たちが、腕や足にマジックテープを巻いてくれたが効果はない。おそらく僕には無理だ、越えられない、と項垂れた頭をもちあげると、そこは扇の外だった。
そう、何も考えないほうがうまくいくことがあるのだ。腰をかがめてそこを出ると、驚くほど何もない広大な地面が広がっている。
(2006年11月15日)