触覚連画 −形の対話−
■概要
デジタルデータとしての絵をネットワークを通して送りあい、相手の絵に手を加えることによって、新しい自分自身の作品を作り出していくコラボレーションアート「連画」。
視覚を閉ざされたなかで、触れることによって形が作られ、触れることによって形が確かめられていく「触覚絵画」。
このふたつの創作実験の出会いから、「触覚連画」が生まれました。
全盲の造形作家、光島貴之。連画の実験を続ける中村理恵子、安斎利洋。
この3人が、触覚とデジタル画像をつなぐインターフェースを駆使して、さわれるバーチャル画像の連鎖を編み上げていきます。
■連衆
光島貴之 Takayuki MITSUSHIMA
1954年/京都産まれ。幼時期の視力は0.02程度。10才頃失明。 1976年/盲学校理療科卒後、大谷大学で実存主義を学ぶ。 1982年/鍼灸院開業。 1992年より、ミューズカンパニー主催の「視覚を越える造形ワークショップ」に参加(以後西村陽平氏に師事)。 1995年8月/フラービオ・ティトロ(全盲の石彫作家)のドローイングに触れて、「触る絵画」のヒントを得る。
■展覧会・公募展・個展など 1997年11月/「アジアの風」(池袋芸術劇場) 1998年3月/98長野アートパラリンピック大賞・銀賞。 1998年4月/「光島貴之展」(ギャラリーはねうさぎ) 1998年11月/「アート・ナウ’98」(兵庫県立近代美術館)
安斎利洋 Toshihiro ANZAI
東京生まれ。コンピュータアーティスト。ソフトウェアエンジニア。 1987年、(株)サピエンスにて、CGペイントシステム「スーパー・タブロー」を開発。「MANDELNET」(1986)「てれめちえ」(1991)など、ネットワークとアートの結合に関心を持つ。 1991年から1997年の間 「日経コミュニケーション」表紙を制作。 1992年/中村理恵子とネットワークを使ったCGの連作「連画」を始める。以降、連画を主体としたアート作品の発表は、国内外で多数。 1993年/「Ramblers」ネットワークモデルによる数理的な作品。 1994年/IMAGINA'94招待公演、SIGGRAPH'94にてインスタレーション。 1995年/第一回情報文化学会賞大賞受賞。マルチメディアグランプリ'95
ネットワーク部門アート賞受賞。 1996年/北京にて「北京連画」ライブ公開。森脇裕之、木原民雄、藤井孝一、牧野純子と
NTT/ICCにて「Moppet連画ワークショップ」制作。 1997年/木原民雄、藤井孝一と「'97マルチメディアフェア沖縄」にて「Moppet」制作。木原民雄、藤井孝一らと「Moppet」制作。「Prix
Ars Electronica97」のInteractive Art部門Honorary Mention入選。 1998年/「触覚連画」の実験(進行中)。インターネット壁画システム「The
WALL(仮称)」を開発中。 著書:「パーソナル・コンピュータ・グラフィックス」(1986/美術出版社)、「ターボ・グラフィックス」(1987/JICC出版局)など。
中村理恵子 Rieko NAKAMURA
北海道十勝国生まれ。アーティスト。 武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業。 1991年/「AVA/NICOGRAPH CGグランプリ」「NICOGRAPH第10回記念CG優秀賞」受賞。デジタル・イメージ創立メンバー。 1992年/安斎利洋とネットワークを使ったCGの連作「連画」を始める。以降、連画を主体としたアート作品の発表は、国内外で多数。 1992、1993年/IMAGINA入選。 1994年/IMAGINA'94(仏)招待公演、SIGGRAPH'94(米)The
Edge、 Art & DesignShow両部門入選。 1995年/第一回情報文化学会賞大賞受賞。マルチメディアグランプリ'95
ネットワーク部門アート賞受賞。 1996年/「'96元旦連画」(共同通信社)で安斎、中村に、歌人の俵万智をまじえたセッション。 北京にて「北京連画」ライブ公開。 ネットワークアートシアター[連芸座]のプロデュース。 1996年〜1998年「ポートレイトinサイバースペース」(インターネットアスキー)コラム連載。 1997年/安斎利洋、木原民雄、藤井孝一らと「Moppet」制作。「Prix
Ars Electronica97」のInteractive Art部門Honorary Mention入選。 1998年/朝日新聞元旦別刷り-特集「21世紀を詠む」-CG連画制作。 『連画メソッドの応用実験』(MMCA支援事業)プロデュース。
映像記録:鎌田恭彦、石原範子
WEB編集:佐藤葉
企画監修:柳沼麻木
■技術的テーマ
・光島貴之の作品を、デジタイズする工夫。
基本的には、白い紙の上に色のついた凸部分があり、触覚と視覚が交換可能な作品が多いのでスキャナーで取り込むことができる。
しかし、凸部の上に凸部があるような場合、どうするか。
・安斎、中村の作品を光島に伝える方法を検討する。
ラスタデータを、ベクタデータに変換し、カッティングスマシン、立体コピーなどで凹凸化する、など。
・安斎、中村の作品に、光島が手を加える方法を検討する。加筆、減筆、変形が可能であることが望ましい。
・色彩を触覚に反映する工夫。色の違いをマチエール(質感)に変換するなどの試み。
・創作の結果としての作品を、多数の人が触ってもいいような耐久性のある作品形態に変換する工夫。
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